合同会社と株式会社の特色比較③(定款による会社自治規定)

合同会社では、「定款」で「会社独自のルール」を規定すれば、「会社法上の原則」とは違った「会社独自のルール」を採用することができる事項が沢山あります。

他方、株式会社においては、法律上、「定款」で「会社独自のルール」を規定できる事項は限りなく制限されています。

上記の会社自治に対する法律上の取り扱いの違いが、そのまま合同会社の特色、株式会社の特色となっています。以下で、この点につき、両者の特色を記載致します。

合同会社における定款による会社自治規定

合同会社では、「出資者と会社経営者は一致している」との前提をおいていることにより、仮に出資者同士の信頼関係が崩れた場合には、その影響が直接会社経営に悪影響を及ぼすことになります。

このため、法律(会社法)は、合同会社について、出資者(社員)同士や経営者(業務執行社員)同士の信頼関係維持を重視する各種の規定を多く設けています。

例えば、「既存社員がその持分を他者に譲渡する場合」や「新規の出資者の加入時」には、既存の社員間の信頼関係が崩れないようなルールを規定していますし、「業務執行」や「定款変更」の場面等では、社員間の多数決による決定を採用しています。

他方、合同会社では、そもそも出資者(経営者)同士の信頼関係が強いために、出資者同士が話し合って、上記のような法律上の規定を採用したくないと思うならば、お互いの合意により、自由に規定を変更できるようにしています。この結果、合同会社では、会社の自治規定である「定款」により、柔軟に法律上の規定を変更できるようにしています

また、法律上、合同会社については「出資者と経営者との一致」を原則にしていますので、「会社が獲得した利益の分配」についても、単なる「出資割合に応じて分配する方法」のみではなく、業務執行の成果等も加味した配分が可能となるようにしています
利益分配についても、
「定款」で規定すれば、「出資割合に応じた分配方法以外の方法」をも採用できるようにしています

以下、合同会社において会社自治がみとめられている主要なものを挙げておきます。

1.利益配当に関する規定

【会社法上の原則規定(会社法622条)】

利益配当は、「各社員(出資者)の出資割合」に応じて分配する。


【定款での規定】

  • 定款に別途規定を定めることで、上記の方法以外の方法での利益配当が可能です。
  • この他、利益配当の時期・回数等を定款で決めることも可能です。

 

2.既存社員(出資者)の持分(出資)の譲渡制限の規定

【会社法上の原則規定(会社法585条)】

業務執行社員の持分(全部又は一部)は、すべての社員(業務執行権のない社員を含む)の承諾がなければ、他人に譲渡することができない。


業務執行権のない社員の持分(全部又は一部)は、すべての業務執行社員の承諾がなければ、他人に譲渡することができない。


【定款での規定】

  • 合同会社においては、既存の社員がその持分を他の者に譲渡してしまうことにより、その持分を譲り受けた者が、突然、会社経営に参加し、これまでの社員相互の信頼関係を壊してしまうことを防止するために、上記のような規定を法律上(会社法)定めております。
  • 上記のような規定が不要であると考える場合等は、社員の持分の譲渡について、定款で「会社独自ルール」を定めることができます
    ⇒「他の社員全員の承諾」を「他の社員の過半数の承諾」に変更する、「すべての業務執行社員の承諾」を「業務執行社員の過半数の承諾」に変更する等が可能です。

 

3.新たな社員(出資者)の加入制限

【会社法上の原則規定(会社法604条、637条)】

新たな出資者を会社に参加させる場合すべての社員の同意が必要となる。


【定款での規定】

  • 合同会社においては、突然、知らない者が会社経営に参加することで、これまでの社員相互の信頼関係が壊れてしまうことを防止するために、新たな出資者の加入場面においても、上記のような規定を法律上(会社法)定めております。
  • 上記のような規定が不要であると考える場合等は、新たな出資者の加入について、定款で「会社独自ルール」を定めることも認めています
    ⇒「すべての社員の同意」を「社員の過半数の同意」に変更する等が可能です。

 

4.業務執行、会社代表

【会社法上の原則規定(会社法590条、591条、599条)】

業務執行社員が複数いる場合には、合同会社の業務は、社員の過半数をもって決定します。ただし、日常的な行為(消耗品・備品の購入等)については、各社員が単独で行うことができます。

業務執行社員が複数いる場合には、各業務執行社員が合同会社を代表します


【定款での規定】

  • 合同会社においては、業務執行社員の相互の信頼関係が存在するため、業務執行の決定については、出資割合等に関係なく、人数割合での意思決定が行われます。
  • 他方、上記のような規定が不要であると考える場合等は、業務執行の意思決定の方法について、定款で、「会社独自ルール」を定めることができます
  • 会社代表権については、各業務執行社員が単独で会社代表権を持ちます。会社代表権を持つ業務執行社員を限定する場合には、定款により代表社員を限定することができます

 

5.定款の変更の手続き


【会社法上の原則規定(会社法637条)】

定款を変更する場合には、すべての社員の同意が必要となります。


【定款での規定】
  • 合同会社では、会社のルールを規定する「定款」を変更する場合には、原則、社員(出資者)の全員の同意を要求しています。
  • ただし、この規定につきましても、定款」で「会社独自ルール」を定めることができます
    ⇒「社員全員の同意」を「社員の過半数の同意」に変更する等が可能です。

 

株式会社における定款による会社自治の制限

株式会社においては、「出資者と経営者とが別々に存在している」ことが前提となっているために、会社の内部に、出資者と経営者が別々に存在しています。また通常、会社経営者は、会社に対する経営権を持つことから、株主に比して強大な権力をもつことが想定されます。
このため、法律上、強大な権限をもつ経営者から出資者を保護する必要性があり、このため、株主保護のための規定を多数設けています。

また、株式会社においては原則として株式の譲渡は自由にできるという前提をとっていますので、出資者同士の信頼関係もあまり強くないということが前提となっています。

このような状況のもとで、法律(会社法)が経営者の権限乱用から株主を保護するために設けた規定等を、会社の自治で変更することを認めてしまっては、不当に株主の利益害される可能性が出てきます。

このため、株式会社については、定款により会社独自のルールを規定できる事項は、極めて少なくなっています。

 

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